世界中のクライマーを引きつけるスコーミッシュ。その名前の由来をご存知でしょうか?それはこの土地の先住民族であるスコーミッシュ族から取られたものです。
今回はクライミングとは少し離れて、スコーミッシュ、そしてカナダという国の成り立ちについて簡単ですが書きたいと思います。
スコーミッシュ族のアート
スコーミッシュの町や岩場の周辺を歩いていると、様々なところにトーテムポールや先住民の伝統的な模様をあしらったオブジェ、アートを目にします。
また、観光案内所にはスコーミッシュの歴史を解説した看板が並んでおり、その成り立ちを読み解くことができます。
Squamish People
アメリカ大陸がコロンブスに発見されるはるか以前より、北米大陸各地には狩猟を主に生活している先住民族が住んでいました。アメリカのインディアンは特に有名ですが、同じような先住民がバンクーバーから内陸部にかけて住んでおり、彼らはスコーミッシュ族と呼ばれています。Squamishとは先住民の言葉で「風の人」という意味です。今でもスコーミッシュ族の血をひく人たちが周辺には多く住んでいます。
彼らはこの土地に植生するイエロー・シダーやレッド・シダーなどの豊富な森林資源でトーテムポールや家屋、丸木舟を作ったり、サケやマスをとって生活をしていました。彼らの文化は口伝で伝えられ、近代までその生活を続けてきました。
カナダの成り立ち
一方カナダという国に目を向けると、17世紀にヨーロッパからカナダに人が移住してくるのですが、最初はタラの漁場として開拓が進みました。また、ビーバーの毛皮を目的に内陸部にも人が進出して行きました。
当時ヨーロッパではビーバーの毛皮は高級品として重宝され、高値を取引がされたそうです。その後はゴールドラッシュが西海岸を中心に起こり、町が栄えて行きました。また、サケ漁も有名でスコーミッシュの川でも遡上している多くの鮭をみることができました。
ちなみにカナダの国名の由来は、イロコイ族の言葉で村を意味する「kanata」から来ています。
カナダの成り立ちについてはお金を見てもわかります。硬貨にはエリザベス女王が、紙幣には初代首相のマクドナルドが描かれており、そこから歴史を学ぶことができます。
欧米から持ち込まれた伝染病などで先住民はその数を減らすことになった一方、先住民の文化や生活を文字や写真で記録することも行われるようになりました。
移民
近代になって農業や林業も盛んになると共に南米やアジアからの移民も多くなり、多民族な国家、町が形成されていきました。日本人も多く移民し、特にバンクーバーには日本人街ができたほどです。1900年代半ばのバンクーバーの日本人の様子は、「バンクーバーの朝日」で映画化されるなどその姿をみることができます。
確かにスコーミッシュの町を歩いていても、白人だけではなく、黒人やインド系、アジア系の人をみることが多くあり、多民族の街ということを実感させられます。
バーで飲んでいるとき、隣の会話を聞き耳を立てて聞いていたのですが、何を言っているのか全くわかりませんでした。僕のリスニング力のせいか、酔っ払いでろれつが回っていないだけなのか全然聞き取ることができなかったのです。しかしよく聞いてみると、フランス語で話しているということがわかったのです。たしかに何を話しているのかわからないわけです。さすがケベック州を要するカナダだけのことはあると、多民族国家であることを認識したのでした。
文化の足跡
保護の名の下に住んでいる土地を追われることもありましたが、近年ではその文化を尊重する環境が整って来ています。
スコーミッシュ周辺の道路標識には英語とスコーミッシュ語が併記されており、スコーミッシュ族の文化を大切にしていることが伺えました。
また、スコーミッシュのような小さな町にもEVの充電スタンドが充実しており、ところどころに案内の看板を見ることができます。新しい時代にこの土地の伝統的、文化的なものを融合させながら発展しつつあるこの町の行く末に思いをはせるツアーとなりました。
参考
- 「カナダの歴史を知るための50章」 細川道久 編著 明石書店
- 「カナダ 歴史街道をゆく」 上原善広 著 文藝春秋
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