今回は主に上腕三頭筋を鍛えるトレーニングとして、ダンベルキックバックの動作や効果について紹介します。
上腕三頭筋はクライミングにおいてはプッシュの動作で使われたり、上腕二頭筋の拮抗筋として体を引きつける時に体を安定させるために重要な筋肉です。
キックバックは上腕三頭筋を鍛えるために効果的なトレーニングですので、ぜひ本記事を参考にしてください。
ダンベルキックバックの動作
ダンベルキックバックは腕を伸ばしてウエイトを持ち上げる動作です。肘を曲げるトレーニングであるアームカールとは逆の動きであり、肘関節の伸展運動と呼ばれます。
上腕三頭筋を主に鍛えることを目的としたトレーニングで、肘の曲げ伸ばしをするのみの単関節運動です。
ダンベルキックバックで使われる筋肉
ダンベルキックバックで使われる、すなわち肘関節の伸展の際に使用される筋肉には下記のものがあります。
- 上腕三頭筋
- 前腕
- 広背筋
- 上腕二頭筋(拮抗筋として使用される)
- 上腕筋(拮抗筋として使用される)
それぞれの筋肉の解剖学的解説と働きを紹介します。
上腕三頭筋
ダンベルキックバックで主に鍛える筋肉は上腕三頭筋となります。
上腕三頭筋は肩関節と肘関節をまたぐ多関節筋で、その名前の通り3つの筋腹から構成されています。
上腕三頭筋には肘関節の伸展、肩関節の内転、肩関節の伸展といった働きがあります。
肘関節の伸展は肘を伸ばしていく局面で使われます。この動きがまさにキックバックの動作となります。
肩関節の内転は体に水平な面で腕を回転させ、脇を閉じるような動作ですが、キックバックにおいては腕が開かないように安定させるために使われます。
肩関節の伸展は腕を後ろに回していく動作で、これも腕の位置を安定させるために使われます。
前腕の筋肉
ダンベルを握り込んで安定させるためには握力が必要となります。このときに前腕の伸筋や屈筋といった全体の筋肉を使うことになります。
前腕の運動には多くの筋肉が関与しています。
前腕の動作には手のひらの水平方向に動かす尺屈と橈屈があります。
また、手のひらに垂直方向に動かす運動を掌屈と背屈といいます。
指の筋肉などを含めると前腕の筋肉はさらに多くの動作をすることができます。
広背筋
広背筋にはさまざまな役割がありますが、キックバックで主に関係する動作は肩関節の伸展になります。
キックバックの際には上腕を体の横に固定しておきますが、これは肩関節の伸展動作を起こし続けていることになります。
したがって、キックバックでは広背筋も使われていることになり、フォームを安定させるため重要な筋肉です。
上腕二頭筋
ある筋肉が収縮するときに、反対に伸長している筋肉を拮抗筋と呼びます。大胸筋に対する広背筋、大腿四頭筋にたいするハムストリングスが該当しますが、上腕三頭筋の場合は上腕二頭筋が拮抗筋として働きます。
上腕二頭筋は筋腹が二つに分かれており、体に近く短い方を短頭、遠く長い方を長頭といいます。
上腕二頭筋の働きには、肘関節の屈曲、前腕の回外、肩関節の屈曲、肩関節の水平屈曲があります。
クライミングにおいても肘を曲げて体を引きつける動作において重要な筋肉です。
上腕筋
上腕筋も上腕二頭筋同様に上腕三頭筋の拮抗筋として作用します。
上腕筋は上腕骨と前腕の尺骨をまたぐ単関節筋で、体をかなり絞ると上腕の肘に近いところに見えてくる筋肉です。
上腕筋を鍛えることで上腕二頭筋を盛り上げ、上腕の迫力を増すことに貢献します。
クライミングでは肘を曲げる動作がほぼ全てのムーブで出てきますので上腕筋も重要な役割をします。
以上のようにキックバックの動作の中では、多くの筋肉が使われていることがわかります。
ダンベルキックバックのやり方
ダンベルを用いたキックバックの実施方法ですが、左手でウエイトを持ち上げる場合で説明します。
ベンチなどに右手と右膝をつき、左腕は上腕が地面と水平に、前腕が垂直になるように構えます。この状態から肘を伸ばして左腕全体が地面と水平になるまでウエイトを上げていきます。
この時脇は開きすぎず、ダンベルが体に当たらないくらいに自然に腕を下ろしていきます。
キックバックの動作は肘関節の伸展と呼ばれ、肘関節のみが動作する単関節運動です。
したがってできるだけ肘の位置が動かないようにしましょう。前後に肘が動いてしまうと負荷が肩や体幹に逃げてしまい、トレーニングの効果が下がってしまいます。
ダンベルキックバックの応用
ダンベルキックバックの応用の一つとして、傾けたベンチにうつ伏せになって行うインクラインダンベルキックバックがあります。
ベンチを使って上体を安定させることができ、腕のみの動作に集中することができます。そして、全身の反動を使うこともできないのでより上腕三頭筋に効かせることができます。
別のやり方としてはチューブやケーブルマシンを使ったキックバックがあります。これは負荷がかかっている範囲が広くなり、収縮からストレッチまで一度に鍛えられるメリットがあります。
ケーブルなどのマシーンを使うとフリーウエイトとは異なって動作の間ずっと負荷をかけることができますので、ミッドレンジを中心にストレッチから収縮まで幅広く一度に鍛えることができます。
以上ダンベルキックバックで鍛えられる筋肉、実施方法と応用について紹介しました。解剖学的に筋肉や動作を意識することで、トレーニングの効率がより高まりますのでこの記事が参考になれば幸いです。
参考元
「プロが教える 筋肉のしくみ・はたらきパーフェクト事典」 ナツメ社
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