筋トレをするときに、どのくらいの重さのダンベルを何回挙げればいいのだろうと疑問に思ったことはないでしょうか。
筋力を強くする、筋肉を大きくするためには、それぞれに適した重量と回数を選択する必要があります。
そこで今回は筋トレの強度について、最適な重量と回数の選び方、それらと筋力や筋肥大との関係を説明していきます。
筋トレの三原理
筋トレには基本となる3つの原理というものがあります。それは以下の様なものです。
- 過負荷の原理
- 可逆性の原理
- 特異性の原理
このうちで過負荷の原理とは、トレーニングを重ねるごとに負荷を増やしていくことで筋力の向上や、筋肥大が進むことをいいます。
逆に言うと同じ負荷でトレーニングをしていては筋肉は成長しないということです。
前回よりも重い重量、多い回数で筋トレを実施する、すなわち負荷を増やしていくことが必要です。
筋トレのボリューム
筋トレで負荷を考える時に”ボリューム”という概念があります。これは扱う重量と、回数、そしてセット数の掛け算で表されるものです。
ボリューム = 重量 x 回数 x セット数
例えばアームカールで10kgのダンベルを10回、3セット上げるとすると、ボリュームは300となります。
重量を変えて15kgを5回、3セットできたとすると225となりボリュームは少なくなります。このように重量は重くなっても、ボリュームが下がるということもあります。
このボリュームが多い方が一般的に筋肥大に有効だと言われます。
厳密にはウェイトを上下させるスピードや、収縮伸展の範囲、反動の有無などで負荷は変化しますが、基本的にはボリュームで考えていくと自分のトレーニング強度を把握しやすくなります。
以下トレーニングの負荷の大きさで分けて、それぞれの特徴を紹介していきます。
高強度低回数
高強度のトレーニングとは、5回くらいまで繰り返しの動作ができる重量で行うものをいいます。負荷が大きい分回数が減るのでボリュームは少なくなる傾向にあります。
最大筋力に近い力を発揮することで、特に神経系の発達を促し、筋力の向上が期待できます。筋力を向上させることにより扱える重量を増やせるので、後述する中強度中回数でのトレーニングのボリュームも増やせし、結果的に筋肥大につなげることもできます。
筋肉には筋繊維の状態として主に羽状筋と紡錘状筋がありますが、羽状筋に対しては高負荷の刺激が効果的だと言われます。
代表的な羽状筋としては、上腕三頭筋があげられます。ベンチプレスやプレスダウンなどのトレーニングでは重い重量を少ない回数で実施することで、効率よく上腕三頭筋の筋力をつけることができます。
高強度の筋トレのデメリットとしては負荷が高いため怪我をしやすいことがあげられます。また、インターバルは長めにとった方が全体のボリュームを増やせるのですが、そうするとトレーニングに時間がかかってしまうことも特徴としてあります。
怪我の防止のためにはフォームが崩れてしまわない様に注意を払い、集中してトレーニングを実施しましょう。
中強度中回数
一般的に推奨される筋トレでは6回〜15回くらいできる重量を扱います。10回3セットなどとよく言われますが、まさにこれが中強度のトレーニングに当てはまります。
この中強度のトレーニングがもっとも筋肥大には有効とされています。それはウェイトの挙上回数を増やすことができるので、ボリュームを大きくできるからです。
負荷の上げ方としては、10回で3セットができるようになったら、次回は11回で3セットにしたり、ウェイトを重くしたりします。
実際のトレーニングでは10回→9回→8回のように回数が減っていくと思いますが、10回→10回→10回とできるようになれば次回負荷を上げていきます。
この中強度中回数のトレーニングよって、筋肥大と筋力アップの両方が期待できます。
低強度高回数
軽い負荷で15回以上の多い回数で実施する筋トレもあります。
この低強度高回数のトレーニングでは、筋肉に化学的なストレスを与えて追い込みます。化学的とは高強度トレーニングの物理的な刺激との対比として使われます。
筋肉中の酸素や栄養を枯渇させることでpHバランスなどの環境を悪化させ、その後の筋肉の肥大を促すということです。
このトレーニングを実施することで、筋持久力を向上させる効果も期待できます。
ただし最大筋力の30%以下の負荷では負荷が軽すぎて有酸素的な運動になり効果がないと言われています。10回あげられるウェイトの60〜80%くらいを目安にトレーニングを実施しましょう。
クライミングのパフォーマンスを上げるためには
以上トレーニングを強度別に紹介してきました。これをクライミングのための筋トレとして行う場合、どのような考えで取り入れればいいでしょうか。
クライミングで向上させたい能力別に、おすすめのトレーニング方法を紹介します。
クライミングパフォーマンス全体の向上
まずクライミングのパフォーマンス全体を向上させたい場合は、通常の負荷の中強度中回数のトレーニングを実施しましょう。
中強度の筋トレを実施することで筋力の向上と筋肥大を同時に起こすことができ、満遍なくパワーの向上が見込めます。
特に苦手なムーブがない、狙っている特定の箇所がない場合は、この負荷のトレーニングで全体のパフォーマンスを向上させることが優先されると思います。
ボルダリングなど瞬発的な力の向上
ボルダリングなど瞬発的に大きな力を発揮する能力を向上させたい場合は、高強度高負荷のトレーニングを実施するとよいでしょう。
リードでの核心ができない、ボルダリングでランジやダイノなどダイナミックなムーブで落ちてしまうといった爆発的なパワーが足りていない場合はこのトレーニングがいいでしょう。グレードを上げていくために取り入れてみてください。
ただし高強度のトレーニングは筋肉や関節への負荷が大きいため、レストは十分にとりましょう。また、トレーニングの頻度は少なめにして、休養日を間に多く設ける、または低い負荷のトレーニングを挟むなどして怪我の防止に努めましょう。
リードなど持久力の向上
リードで前腕がパンプして落ちてしまうといった場合は、低負荷高回数のトレーニングがおすすめです。
例えばクライミングで重要な筋肉である前腕は、筋肉内の環境悪化による血液の流入増大と排出能力の低下によってパンプが発生すると考えられています。
これに対して低負荷高回数のトレーニングを実施して、化学的なストレスに耐性をつけておくことにより、長時間に渡って力の発揮が可能となります。
この低強度高回数のトレーニングはリードクライミングだけでなく、手数の多いボルダリング課題にも有効です。
以上筋トレの重量と回数について紹介をしてきました。トレーニングの強度によって期待される効果が違いますので、そのときに強化したい部分を意識して選択するといいでしょう。
またクライミングにおける弱点に合わせて強度を選択することで、効率よくパフォーマンスを向上させることが可能になります。この記事がトレーニングの参考になれば幸いです。
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