クライミングのための筋トレ vol.2

Training
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前回に続いて、クライミングのためになぜ筋トレをしたほうがいいのか、私の考えを解説していきます。

トレーニングの原理

トレーニングには以下の3つの原理というものがあります。

  • 過負荷の原理
  • 可逆性の原理
  • 特異性の原理

過負荷の原理

これはオーバーロードの原理とも呼ばれ、筋肉の成長のためには強い負荷をかける必要があることを言います。例えば右腕で10kgのダンベルを10回持ち上げることができる場合、次のトレーニングをするときは10kgより重いダンベルにするか、10回より多くの回数をこなさなければ筋力は大きくなりません。筋肉を成長させるためには、より負荷を大きくしていく必要があります

可逆性の原理

これは過負荷の原理の逆で、負荷を与え続けないと筋肉が衰えてしまうことを言います。歩くことをしなければ足が細くなり、クライミングをしなければ腕は細くなっていきます。マッスルメモリーがあるにせよ、筋肉は使わなければ退化してしまうので、継続的にトレーニングをする必要があるのです。

特異性の原理

これは一つの種目で鍛えられる筋肉は、その種目で使っている筋肉のみであることを言います。懸垂をしていても足が鍛えられないことを考えると、わかりやすいでしょう。全身の筋肉を鍛えたい場合は、多くの種目が必要になってくるのです。

筋トレのメリット

ここまでトレーニングの原理を解説してきましたが、なぜクライミングにおいても筋トレをしたほうがいいのか、私なりの考えを説明したいと思います。

観測可能である

スポーツのパフォーマンスを向上させる場合に大切なことは、観測可能であることです。観測可能とはどういうことかというと、客観的に、数値でパフォーマンスが測定可能であり、評価可能であるということです。

クライミングにはグレードという尺度があるものの、人によって体感がばらつきやすく主観的であり、一つのグレードの幅もあります。パフォーマンスの伸びを評価するのには向いていません。

それに対して、ダンベルなどのウエイトを用いたトレーニングであれば、重量と回数を数値化して記録することができます。それは人によって変わるものではなく客観的なものさしとして使えますし、負荷の設定は細かくできます。客観的な数値として測定可能なので、パフォーマンスが向上しているのか停滞しているのか、効果を評価するのに適していると言えます。

過負荷の原理が適用しやすい

クライミングのパフォーマンスを向上させるためには、過負荷の原理に従って、負荷を少しづつ上げていくことが必要です。しかし、クライミングで徐々に負荷を上げたい場合は、壁の傾斜が変えられるような施設や、高度なルートセットの技術が必要となります。

かといって、グレードが上の課題を登るとしても、ムーブも傾斜も違ったりするので、鍛えている筋肉が異なってしまいます。そうすると使われていない筋肉が、可逆性の原理に従って(大げさに言えば)退化してしまうのです。

それに対してウエイトを使ったトレーニングでは、重量を増やすか回数を増やすことで、簡単に過負荷の原理に従った運動を実施することができます。

ピンポイントに鍛えることができる

クライミング動作を行ってパフォーマンスを上げる場合、より難しい課題にトライすることになります。しかし、課題が変わってしまうと使っている筋肉が異なるため、本当にパフォーマンスが上がっているのかどうか判断できません。腕の引き付けは強くなったけど、指の保持力は弱くなったということが起きかねません。

つまり特異性の原理が働くことで、鍛えたい場所が鍛えられない状況が起こります。そうすると結局、桶の理論で説明したように、弱点に制約されて課題が登れなくなってしまうのです。

それに対して、一番の弱点をピンポイントに狙って鍛えることができるのが筋トレです。ウエイトを使ったトレーニングによって、効率よくパフォーマンスを向上させることができるのです。

自宅でできる

クライミングの練習をするためには、実際に外の岩場へ行くか、クライミングジムに行って壁を登るしかありません。そうすると時間もお金もかかりますし、外であれば天候に左右されます。

それに対して筋トレは、家にダンベルがあれば、それを使って自宅でトレーニングが可能となります。空間と時間の制約から解放されるというわけです。

特に今のコロナ禍においては、ウイルスに感染するリスク、広げるリスクを考えると、遠出は難しいでしょう。自宅で過ごす時間が増えた方も多くいると思います。つまりコロナの時代の新しい生活様式に、自宅でできる筋トレが適していると言えるのです。

なぜクライミングのために筋トレが必要か

前回と今回の記事で、クライミングのための筋トレの考え方とメリットを解説してきました。ウエイトを用いた筋トレをお勧めする理由を簡単にまとめます。

  • 重量や回数の設定によって、数値を客観的に評価できる
  • 少しづつ負荷を増やすことができ、過負荷の原理に従って成長できる
  • 特異性の原理に従ってピンポイントに鍛えることができる
  • 場所と時間を選ばず、コロナ時代のトレーニングとして適している

このように弱点を効果的に、客観的に鍛えることができるため、桶の理論の最も低い板を改善して、クライミングのパフォーマンス全体の向上に寄与できるのです。

クライミングはパワーウエイトレシオ(筋力と体重の比率)がものをいうスポーツです。筋トレをして体重が増えることは避けたいと思う人もいるでしょう。そう思ったときは桶の理論を思い出してほしいです。もし目標の課題が登れない理由が筋力不足であれば、そこを重点的に鍛えるといいでしょう。そうではなく、自重が重いことが桶の一番低い板だとわかったのであれば、そのときに体重を落とせばいいのです。

また、課題を登ることと、クライミングのパフォーマンス全体を上げることを別に考えなければいけません。特異性の原理に従えば、課題を登るために一番のトレーニング法は、その課題にトライすることです。しかし、それではその場限りの対策であり、様々な課題に対応する能力には結びつきません。

筋トレなんて地味で嫌だと考える方もいるでしょう。クライミングの多彩なムーブを繰り出すのが好きなのに、単純動作のつまらないことをやりたくない、そう思うのも当然です。筋肉を大きくして体重が増えるのも嫌だというのもわかります。それでも、弱点を弱点のままにしておくのはもったいないと思うのです。あなたの伸びしろがまだまだ残っているというのに。

クライミングのムーブやテクニック、コンペ対策などは様々な書籍やウェブサイトで紹介されていますので、それらを参考にしていただけるといいと思います。本ブログではこれまで解説してきたメリットが享受できる、筋トレにフォーカスして紹介をしていきますので、参考にしていただければ幸いです。

参考元

  • 「パフォーマンスロッククライミング」山と渓谷社
  • 「コンペで勝つ!スポーツクライミング上達法」山と渓谷社


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