今回はクライマーの多くが気にすると思われるカロリーについて考えています。
健康であることが前提
まず最初に強調しておきたいのは、最も大切なのは健康でいることだということです。
クライミングはパワーウェイトレシオ、すなわち同じ力であれば体重が軽い方が有利だとされるスポーツです。
したがってできるだけ体重を軽くしようと過度な食事制限や運動を実施してしまうことがみられます。
しかしこれによって体調を崩す場合がありますし、ひどい場合には摂食障害などを引き起こして通常の生活に支障をきたすこともあります。
そうなってしまってはクライミングどころではありませんし、私生活に影響を与えてしまいます。結局クライミングのパフォーマンスも上がりませんし、精神的にもつらい状態になってしまいます。
食事、運動、休養のバランスをとり、健康的な生活を送ることで、心も体も充実させることができます。
つまり健康的な生活がクライミングのパフォーマンスを上げることにもなりますので、決して過度なダイエットしないようにしましょう。
カロリーについて正しい知識を身につけることが、健康的な生活、すなわちダイエットにつながると思いますので以下で紹介していきます。
カロリーとは
そもそもカロリーというのはエネルギーの中でも熱エネルギーの単位です。中学校や高校の物理で習うと思いますが、水1gすなわち1mlを1℃上げるために必要なエネルギーが1calと定義されています。その1000倍の水1Lを1℃上げるために必要なエネルギーは1kcalとなります。
他にもエネルギーの単位としてはジュールもあります。参考までに1cal=約4.2Jです。
全ての運動の源はエネルギーです。人間が動くためにはミトコンドリアの内部でATPから化学的なエネルギーを取り出し、それが筋繊維の伸縮という運動エネルギーとなります。
この過程で無駄となったエネルギーが熱エネルギーとなって体の熱を上昇させます。おおざっぱにいうと下記のような関係にあります。
化学反応のエネルギー(細胞内の反応) = 運動エネルギー(筋肉の伸縮) + 熱エネルギー(体温の上昇)
ここでエネルギーが消費されることをカロリーを消費すると一般的に呼ぶわけです。
消費カロリーと摂取カロリー
消費カロリー
人間がエネルギーを消費する過程には以下の3種類があります。
- 基礎代謝
- 活動代謝
- 食事誘発性熱産生
基礎代謝とは寝転んで何も運動をしていなくても消費するエネルギーのことをいいます。血液を送るための心臓の動きや呼吸をするための肺や横隔膜の動き、脳でのエネルギー消費などです。
活動代謝とは体を動かすことによって消費するエネルギーです。足を動かせば太ももやふくらはぎの筋肉が動き、腕を動かせば上腕や前腕が動きます。この骨格筋の動きによるエネルギー消費のことを言います。
食事誘発性熱産生とはその名の通り食事を食べることによって発生するエネルギーです。DIT(Diet Induced Thermogenesis)とも呼ばれます。
食事を取ると胃では消化液を出して分解をし、腸では栄養や水分を吸収します。また、食べ物を運搬するために内臓が動き、栄養素を代謝します。この過程でエネルギーが消費されます。
食事をすると体が熱くなるのはこのエネルギーによるものです。
食事誘発性熱産生は炭水化物や脂質よりもタンパク質を摂取した時の方が多く消費されます。
カロリー収支
エネルギーを摂取するためには食事が必要です。そして消費カロリーが摂取カロリーよりも大きい場合にアンダーカロリーとなり、体重が減ります。
逆に消費カロリーが摂取カロリーよりも小さい場合、オーバーカロリーとなり体重が増えていきます。
消費カロリーと摂取カロリーが同じ場合は体重は維持されます。このときのカロリーをメンテナンスカロリーといいます。
厳密には排泄や発汗による体重の減少もありますが、長期的にみた場合は基本的にはカロリー収支で考えるとよいでしょう。
人間にはホメオスタシス(恒常性)という機能があります。これは体温を約36℃に維持しようとすることが代表的で、周囲の変化にも耐えられるように体の機能を一定に保つ性質です。
このホメオスタシスのために、摂取カロリーを減らしてもそれに合わせて消費カロリーを減らそうとすることがあります。
これによって体重がなかなか減らず、ダイエットがなかなか進まないということが起こります。したがってダイエットのために無理に摂取カロリーを減らすことは得策ではないことがわかります。
食事のカロリー
食べ物に含まれるカロリーはどのくらいあるでしょうか。
1gあたりのエネルギーは、タンパク質で4kcal、糖質も4kcal、それに対して脂質は9kcalです。脂質のカロリーが飛び抜けて多いことがわかります。
ダイエットのためには脂質をコントロールすることが重要だといえます。
また上でも述べましたが、タンパク質は食事誘発性熱産生があるので、摂取したとしてもある程度エネルギーが消費されます。
したがって、脂質を減らしてタンパク質の割合を増やしていくことで摂取カロリーを減らして、消費カロリーを増やすことが比較的やりやすくなります。
細かいカロリーの計算をしなくてもこのポイントを意識するだけで効果は十分にあるでしょう。
食事に関してはビタミンやミネラルはカロリーはありませんが重要な栄養素です。体内の栄養素の反応を促進し、筋肉の合成や脂肪の分解を促す役割がありますので必要量を確保することが望ましいです。
食物繊維も腸内環境を整えるためには必要ですので、野菜を積極的に取ったり、炭水化物に含まれる食物繊維を意識するなどしましょう。
カロリーコントロール
以上のことから筋肥大を積極的に起こすための増量も、脂肪を取り除いていく減量のどちらにおいても、摂取する食事の内容を考慮し、カロリー収支を管理することが重要です。
しかし消費カロリーは年齢、性別、体格、活動量などによって全く変わってきます。日々自分が何をどのくらい食べているか、さらにどのくらい活動しているか把握することが重要です。
また、ホメオスタシスが働くことによって常に消費カロリーは変わっていきますので、だいたいの摂取カロリーを高い頻度で確認しましょう。
筋トレとダイエットは別物です。ダイエットのためには食事が大事で、運動は補助的なものと考えて健康的な生活を送ることを心がけましょう。
以上カロリーについて解説してきました。エネルギーに関する基本的な内容から、実際に食事と運動をどのようにすればいいか紹介してきましたので、みなさまの健康的なダイエットの参考になれば幸いです。
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