今回はトレーニングにおいて発生する現象として”レミニッセンス効果”というものを紹介します。
レミニッセンス効果ってなに?と思った方がほとんどかもしれません。普段聞きなれない言葉ですが、クライミングに限らずトレーニングをしていると実際に経験する方も多い現象です。
今回はそのレミニッセンス効果について紹介していきます。
レミニッセンス効果とは
筋トレである程度トレーニングができない休止期間の後に運動を再開してみると、以前より扱える重量が増えるといったことがあります。
ベンチプレスで50kgを10回上げるのが精一杯だったのに、仕事が忙しくて2週間とか1ヶ月トレーニングができずに間があいてしまい、その後筋トレを再開してみると50kgが11回上がったり、52.5kgで10回上がったりすることがあります。トレーニング再開直後に上がらなかったとしても、数回トレーニングをするうちに以前よりパフォーマンスが良くなったりします。
直感的にはトレーニングの休止期間を設けてしまうと、強度が下がってしまうように思いますが、実際は逆の現象が起こることがあるのです。
レミニッセンス効果のメカニズム
このレミニッセンス効果が起こる原因としてはいくつか考えられます。
ひとつはたまっていた疲労が抜けるというものです。
トレーニングを継続して行なっていくうちに、知らず知らずと筋肉的な疲労や、神経系の疲労が溜まってパフォーマンスが頭打ちになります。そこに適度な休止期間を設けて疲れを取ることで、筋肉細胞内の環境の改善、グリコーゲンの充填、神経反射の向上によって、最大筋力を上昇させることができます。これによって結果的に休止以前よりも扱う重量が増えたり、挙上回数を増やすことができます。
もうひとつはマッスルメモリーによるものです。トレーニングを休止すると筋細胞が縮んでしまうように感じますが、グリコーゲンの減少やパンプの抑制などによってしぼんで見えるだけで、筋繊維が減少するわけではありません。筋細胞は残っており、トレーニング休止前に鍛えられた筋力は実は残っています。
これによってトレーニングを再開することによって血流や栄養が戻ってくると、筋力が元通りになったり、もしくはそれ以上に強くなっている場合があります。
クライミングのレミニッセンス効果
クライミングでもこのレミニッセンス効果を実感する場面があります。
例えばある課題のトライを続けて行くと当然疲労もあって登れなくなります。その後何かの事情でクライミングができず、少し間があいて久しぶりにトライするとその課題がクリアできることがあります。
筋力のアップや疲労の除去、スキルの向上などさまざまな側面から総合的にクライミングの能力が上がって登れたと考えられます。
つまり疲労やパンプである課題の完登が難しくなったとしても、スキルの向上や神経系の発達を目的として、つまりレミニッセンス効果を期待してしつこくトライを繰り返してみることは、後日登りに来たときに完登するための有効な手段となりえます。
ただし疲労がたまって集中力が欠けた状態で無闇にトライすると怪我の原因にもなりますので、限度に注意する必要があります。
積極的にレストをとろう
これまでレミニッセンス効果のメカニズムと、実際にトレーニングでの現れ方を紹介してきました。
しばらくトレーニングから離れていてもパフォーマンスが上がるということは、逆に言えばレミニッセンス効果を利用することで、オーバーワークを避けることができると考えられます。
焦ってトレーニングのボリュームを増やしすぎたり、トレーニングの頻度を上げすぎて疲れたと思ったり、停滞期が訪れたらあえてレストすることも重要です。
このレミニッセンス効果を知っていれば、休むことも怖くありません。積極的にレストを取って怪我をしないようにトレーニングを継続することが結果的にパフォーマンスの向上に役立つでしょう。
以上トレーニングにおいてよく起こるのですが実は名前があるという現象として、レミニッセンス効果についての紹介でした。この現象を利用しながらうまく運動をしていってはいかがでしょうか。
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