クライミングシューズの種類と選び方

How to
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クライミングをする場合にもっとも重要な道具と言っていいのがクライミングシューズです。

シューズによってホールドとのフリクションを最大化させ、凹凸のない面に押し付けてスリップしないようにしたり、結晶のような細かいホールドに立ち込むことが可能になります。

ここではクライミングのパフォーマンスに直結する、クライミングシューズについて紹介していきます。

クライミングシューズの特徴

クライミングシューズと普通の靴との違いはいくつかあります。

まず足にフィットした形状です。足先はつまっており、指を広げる隙間がないようになっています。足の指をぎゅっと密着させることで力が入り、細かいフットホールドでも乗ることができます

つまさきからかかとまで足全体がシューズに密着する構造になっており、足のどの部分をつかってもホールドに乗ったりひっかけたりしてもホールドをとらえる感覚(足裏感覚)があります。また、その密着性からホールドに強くシューズを引っ掛けたとしてもシューズが脱げてしまわないようになっています。

また、フラットなソールもその特徴です。F1でフラットタイヤを使用するように、凹凸の少ない面に対して最大限のフリクションを得るために、クライミングシューズのソールも溝がない構造になっています。土や砂の上を歩く場合は登山靴のような凹凸があることでフリクションを生みますが、クライミングのホールドのような凹凸がないものに対してはフラットなソールが有効です。

クライミングシューズの用語

クライミングシューズは様々なパーツが組み合わさってできています。シューズによってはないパーツがあったり、メーカーによって呼び方が異なったりしますが、主なパーツや用語を紹介していきます。

ソール

シューズの下部を覆っており、クライミングのパフォーマンスにとって最も重要なパーツです。特に先端のエッジは、小さなホールドに乗る場合の足裏の感覚にとって非常に重要です。また、スメアリングで大きい面積でホールドを捉える場合はフリクションの性能が重要です。


硬いソールであれば剛性が高くなりますのでエッジングがしやすくなりますが、フリクションは低下する傾向にあります。

一方で柔らかいソールであればホールドの細かな凹凸を吸収することでフリクションを向上させることができます。反対に剛性が下がるのでエッジングでは不利に働きます。

この剛性と柔軟性のバランスや、ソールの厚みによる足裏感覚の変化など、各社がシューズによって工夫をこらしているポイントになります。

スポルティバのビブラムソールやファイブテン(現在はアディダスに買収された)のC4ラバーなどは有名です。

トウ

シューズのつまさきの部分を覆うパーツをトウまたはトウラバーといいます。ホールドとコンタクトする頻度が最も高く、剛性や足裏感覚に特に関係する部分です。

先端部のみにラバーがあるものは比較的柔らかく足入れがいいです。

足の甲までラバーで覆われているシューズの場合は、トウフックが効果的にかかる部分が多いので、トウフックが重要なムーブとなる課題に向いています。

ヒールカップ

かかとを収納するパーツをヒールカップと呼びます。直角に近い形状のものは足入れがよく、はきやすいですがヒールフックをかけるときに脱げやすい場合があります。


それに対して鋭角な形状になっているものは締め付けが強く、ヒールフックをかけても脱げにくくなっています。


かかとは個人差が結構大きいので、自分の足にあった形状にするのがいいでしょう。

スリングショット

土踏まずからかかとの上部、アキレス腱に向けて貼られているラバーをスリングショットと呼びます。これはシューズの形状を安定させるために存在していて、特にヒールカップが開いてしまうことを防ぎます。

スリングショットがあることによってシューズ全体の剛性がたかまり、ヒールフックをかけても脱げにくくなります

ランド

シューズのサイドから土踏まずまで広い範囲を覆うラバーをランドといいます。シューズ全体の形状を形作るパーツです。

ランドの外側にスリングショットやヒールカップとなるラバーが張り付いている多層構造となっています。

アッパー

その名の通りシューズの上の部分を形づくるものがアッパーです。主に布で作られており、ランドと同様にシューズの形状を決めます。

アッパー部分にもラバーを貼り付けてフックの性能を向上させたり、靴紐の形状を工夫するなど、足入れだけでなく性能やデザインの面でも重要なパーツです。

プルタブ

ヒールカップの上部についたループ状の紐がプルタブです。アッパー側についているものもあります。普通の登山靴にもついており、ここを引っ張って靴を履くためにあります。

クライミングシューズはサイズが小さめで履くことが多いので、プルタブを強く引っ張ることがあるのですが、両手で引っ張れるようにプルタブが2つついているモデルもあります。


ベルクロ

シューズの締め付けを増すために取り付けられた面ファスナーのことをベルクロと呼びます。ベルクロが一本のみのシューズから三本ついたものまで様々あります。

ベルクロの折り返し方でも個性があり、一の字に閉めるだけのものから、V字を横にしたように折り返すもの、ジグザグと何度も折り返すものまで色々な種類のシューズがあります。

一本であればある程度の締め付けがあり脱げにくくすると同時に、トウフックなどのアッパー側を使ったクライミングと両立できます。本数が多くなるほど足へのフィット感は向上しますが、先端部まで干渉するのでトウフックがしづらくなるなどデメリットもあります。

ラスト

クライミングシューズのパーツではないですが、重要なものとしてラストがあります。このラストとは足の形をした木型のことで、シューズを作るときにこれを使うことによって、シューズの形状を形作ることができます。

このラストによってシューズ全体の形状が決まってきますので、シューズの足入れや履きやすさなどに非常に関係してきます。

ダウントウ

クライミングシューズのなかでも、トウ側が下に向かって曲がっている形状をダウントウといいます。


シューズの先端を鳥の嘴のように曲げることで、特に強傾斜での足のかき込みがしやすくなり、リーチいっぱいのムーブを行ったときでも足が残りやすくなります

反対にスラブなど広い面で乗る必要があるときは、べたっと乗るための足裏感覚が低下してしまいます。

ダウントウのシューズはその形状のせいで足入れがきついこともありますし、つま先に乗っている感覚を掴むのが難しいので使いこなすのにコツが必要で上級者向けのシューズと言えます。

ターンイン

つま先が先端に向かって内側に曲がっている形状をターンインといいます。内側に曲げることによって親指側に力を集めることができるので、インサイドエッジに力を入れることができます。これによって特に垂壁などで壁に張り付いた状態でのフットホールドへの乗り込みがしやすくなります。

ストレートな形状のシューズの場合は親指の付け根あたりが壁に当たってしまい、足が切れてしまうことがあります。股関節や足首が硬くて足の角度を調整できずにインサイドエッジが当たってしまいます。このような状況のときにターンインしたシューズを使うことで、しっかりとフットホールドに乗ることが可能になります。

クライミングシューズの種類

レースアップタイプ

普段履きの靴や登山靴のように靴紐でアッパーの部分を締め付ける構造のシューズをレースアップシューズといいます。


クライミングシューズができた当初はほとんどがレースアップタイプのものでした。シューズ全体の締め付けがよくて足にフィットし、ヒールフックなどでも滅多に脱げることはありません。

一方で脱ぎ履きが面倒という点や、締め付けが強すぎて足に痛みが出る場合があるのが欠点と言えます。シューズの先端の方まで靴紐で締め付ける部分があるので、トウフックでかける面積が小さくなるというデメリットもあります。

ベルクロタイプ

アッパーの部分を面ファスナーで締め付けるタイプのものをベルクロシューズといいます。面ファスナーを剥がすだけで簡単に着脱することができるので、快適にクライミングができます。


面ファスナーの数も様々で、一本のみのものから三本で締め付けるものまであります。一本締めベルクロシューズの場合はアッパーの面積が大きくなるので、トウフックなどがかかりやすくなります。しかし締め付け力が弱いので足裏感覚が弱まったり、比較的脱げやすくなったりします。

ベルクロが二本や三本になると締め付けがしっかししてくるので脱げづらくなりますが、アッパーの面積が小さくなるのでトウフックなどがかかりにくいという欠点があります。また、部品が多くなるのに伴って価格も上がってしまいがちです。

スリップタイプ

クライミングシューズの中でもシンプルな構造なのが、上履きのようにすっぽりと足を入れるだけで履けるスリッパタイプのシューズです。


レースアップやベルクロと違い、履いた後に締め付ける構造がないので、ゆるく履くことができて快適です。その一方でヒールフックなどで脱げやすいという欠点があります。

締め付け感を増そうとしてきついサイズを選びやすいシューズでもあります。

近年ではスリッパタイプのシューズにベルクロをつけて、締め付け力を増して足へのフィット感を向上させると同時に脱げにくくしているものがスタンダードになりつつあります。

クライミングシューズの選び方

以上のような特徴を踏まえて、クライミングシューズの選び方を紹介したいと思います。

初心者向け

クライミングジムに何回か通い、慣れてきたときに最初の一足として購入するシューズとしておすすめなのが、足入れがよくて履きやすいものです。

最初はどのようなクライミングシューズが自分にあっているのかわからないですし、シューズがきついせいでクライミングをやめてしまうともったいないです。

長く続けることが一番重要だと思いますので、長時間履いていても痛くならないようなシューズを選ぶといいでしょう。例えばフラットなソールでダウントウやターンインがなく、サイズもちょうどいい大きさのものです。

お店で試し履きをする際にはビニール袋などを使うことがありますが、小さめのシューズでもすんなりと入ってしまいます。ビニール袋なしで履いてしまうときつくて痛いということがありますので、小さすぎないものを注意して選びましょう。

クライミングに慣れてきたら

ある程度慣れてきたらタイプの違うシューズを試してみるといいでしょう。レースアップで締め付けがいいものや、ターンインやダウントウのものを履いてみて、足裏感覚に優れているか、傾斜のある壁で足が残せるかどうか、痛みにどれくらい耐えられるかなど、シューズのタイプが自分にあっているか確認してみましょう。

ソールの種類でもフリクションが変わってきますし、厚みによって足裏感覚やホールドへの密着性も変わってきます。人がおすすめだと言ったとしても足型は千差万別ですので、自分のフィーリングで選ぶことが重要です。

数年たったら

何足か試してみると、自分のシューズの好みがわかってくると思います。フラットなシューズが足裏感覚がわかっていいとか、ダウントウで足を残すムーブが効果的にできるなど、特定のムーブにあわせて使いこなせるようになってきます。

この段階になると用途によって使い分けるなどする人もいるでしょう。強傾斜ではダウントウ、フットホールドが細かい垂壁ではターンインラブでは柔らかいソールのシューズなど、ルートによって適切なシューズというものがわかってくると思います。

複数のシューズを持って、ルートによって履き分けるといったこともできるようになります。

あとはお財布との相談でしょうか。しかし高くても20000円強と、本格的な登山靴に比べれば手が届きやすいものですので、いきなり最高性能のシューズを選択してみてもいいでしょう。


以上クライミングシューズの特徴と用語の紹介、レベルごとのシューズの選び方を解説してきました。

すでに完成形になりつつあるシューズですが、各社工夫をこらして開発を行なっており、デザインも多様です。

こちらの記事がクライミングシューズ選びの参考になればうれしいです。

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