クライミングのアプローチでの安全対策

How to
スポンサーリンク

今回は岩場に行くときのアプローチでの危険の原因と安全対策を紹介していきます。

ここでいうアプローチは山の入り口から岩場までだったり、駐車場や道路から岩場までの道のことを言います。ですので車や電車での移動や家の周辺などは除いて考えます。

ここでは「危険」をその発生源である「危険源」と、危険源によって発生する結果である「危険状態」に簡易的に分けて説明します。

危険状態にあると、自分の生命への危険はもちろん、救助するクライマーやレスキューの方も更なる危険に巻き込む可能性があるので、このような状態にならないように危険源を回避する、または取り除くように注意しなければいけません。

アプローチでの危険状態

岩場に行くまでのアプローチにおいて危険状態にはなにがあるでしょうか。

怪我

アプローチでの危険状態で一番多いと思われるものが怪我です。地面の石や木の根っこなどの段差による捻挫や、落ち葉や泥などで滑って転倒して骨折をしたり打撲することが考えられます。

また、木の枝や、人工物でいうとフェンスや鉄筋などで切り傷になる場合もあります。

他には虫や棘のある植物による刺し傷もあるでしょう。ハチやアブ、毛虫などの虫が自然の中にいますので注意が必要です。

道迷い

アプローチでの危険状態というと道に迷うことが挙げられます。登山道の分岐で間違えたり、目印がわかりづらかったり、トポをうまく読み取れずに道を間違ってしまうことが考えられます。

登山が盛んな場所などでトレイルがはっきりしていればいいですが、クライミングエリアはクライマーしか行かない場所も多く、踏み跡が明確ではないところもあります。

小川山や瑞牆といった登山客が多い場所でも、登山道から外れたところにある岩場は場所がわかりづらい場合もあります。雪解けの後や、秋など草が生い茂っている時期なども踏み跡が不明確なときもあるので道に迷ってしまう可能性があります。

体調不良

他の危険状態としては体調不良によって行動できなくなってしまうというものです。発熱寒気吐き気など気分が悪くなってしまい、移動する体力や気力がなくなってしまうことが考えられます。

コンディションがいい冬に岩場にいく場合はやはり気温が低いですし、空気が乾燥しています。防寒対策などしていても疲れなどで免疫が下がっていれば風邪をひいたりしてしまうでしょう。

他にも空腹精神的な不安から体を動かすことができなくなるなど様々な要因があります。

アプローチでの危険源と安全対策

これまで岩場へのアプローチの危険状態として怪我、道迷い、体調不良を挙げてきました。それら危険状態の原因すなわち危険源とはなんでしょうか。そしてその危険源に対する安全対策とはなんでしょうか。

地形や樹木

アプローチの際に転倒して打撲や切り傷を負ってしまう原因として挙げられるのは、地面の凹凸転石木の根などがあります。

いつも使っている慣れているアプローチでも油断をしていて足元が疎かになったり、クライミングをした後で疲れていて足が上がらずつまずくこともあります。

また雨で地面がえぐられたり動物が掘り返したりして凹凸が変化するなど、アプローチ自体も常に同じ状態とは限りません。アプローチを歩く際には常に足元には注意を払わなければいけません。

また、崖の近くを移動する場合は頭上から石が落ちてくる場合もあります。とくにクライミングエリアに向かう場合は岩壁の付近を通ることが多いので、突然頭上から石や木の枝、カラビナなど様々なものが落下してくる可能性もあります。

したがって崖の周辺や枯れ木の下を通るときは頭上への注意も必要です。その対策としてはヘルメット、少なくとも帽子を被っておきたいところです。

秋冬などは落ち葉が多く落ちていますので、落ち葉が積み重なっていると滑りやすくなります。特に斜面では滑りやすく危険です。

また、落ち葉が地面の様子をわかりづらくする場合もあります。段差や木の根を隠してしまい、不意にそれを踏んで捻挫などする可能性もあります。

落ち葉があるところを歩かない、落ち葉をどかしながら歩くなどしましょう。また滑らないようにするためには、足の裏が地面に平行になるように真下に下ろす意識で着地しながら歩くといいでしょう。

その他には雨によるぬかるみも危険源となります。泥の上を歩いてしまうと高性能のシューズを履いていたとしてもスリップします。特に泥のついたシューズで岩盤の上を歩く場合、さらには落ち葉やゴミなどを挟んでしまうと滑りやすく危険なので注意が必要です。

ぬかるみや泥のある場所は歩かない、それらが避けられない場合は泥をすぐに落とすことが有効な対策です。

道具の不備

アプローチをする際に怪我をする原因として道具、装備の故障や不具合などが挙げられます。

シューズがのソールがすり減っていたり剥がれている靴紐が解けている場合はシューズが脱げやすくなりますし、足元が不安定になってしまうことでつまずいたりスリップする原因になります。家を出る前、アプローチの前にシューズの状態を確認しましょう。

そもそもアプローチが短いからと言ってサンダルで行ったりするのは避けた方がいいでしょう。沖縄の具志頭のような海岸なら問題ないと思いますが、御岳や塩原などの比較的アプローチが楽なエリアであっても、足元が不安定な場所はありますのでしっかりとしたシューズでいくことをすすめます。

足元が不安だという場合はトレッキングポールを使うのも有効です。ボルダリングであればチョークを落とすための大きめのブラシを代用してもいいでしょう。

道迷いの原因として、暗くなったときにライトを携帯していないことが考えられます。しかしせっかくライトをもっていっても故障していたり電池切れだと意味がありません。事前に動作を確認するのと、予備の電池を持っていくなど準備をしましょう。もしくは手回し式のライトなどもいいでしょう。

あとは頭の保護も考えてヘルメットを装着することも有効ですが、ひび割れがないかあごひもが壊れていないか確認しましょう。頭上から石や木の枝などが落ちてきても、確実に頭を守って致命傷を防げるように準備することが大事です。ヘルメットはクライミングエリアに到着してからも役に立ちます。

アプローチの確認不足

道迷いの他の原因として、地図やトポを読めていないことが考えられます。よくあるクライミングのトポでは手書きのものが多く、岩と岩の距離感であったり、地形が正確に書かれていなかったりと、読み解くのに慣れが必要です。

あくまで簡易的な絵が掲載されているので方角が間違っていることもありますし、目印となる建物や岩、木なども間違っていたり、変化している場合もあります。

例えば御岳であれば黒本は読み取るのにコツが必要なので、「MITAKE BOULDERING AREA GUIDE」などの新しいトポを入手できればわかりやすい地図が載っており、ボルダー課題も写真付きなので迷うことはないでしょう。

他に道に迷う原因としては、アプローチではないところをショートカットしようとして危険な場所に入ってしまうことがあります。下地が整備されていなかったり、段差や穴が隠れていたりしてそこにはまって怪我をしてしまう場合があります。

ときどきアプローチ上の斜面に歩行の補助としてロープや鎖が張ってある場合がありますが、これらへの過信にも注意が必要です。これらは斜面で滑ってしまわないようにと親切心で設置されたものですが、あくまでも自分の判断と責任において使用すべきです。そのロープや鎖がいつ、誰が設置したかも不明ですし、安全が完全に保証されているわけではありません。多くの人が使用する中で磨耗されて強度が十分でない場合もあります。補助用のロープや鎖は極力使わずに、自分の手足のみで歩き、もし滑った場合のみ使用するようすることをおすすめします。

山の中のアプローチを歩いていると、木にテープを貼って目印としている場合があります。

例えば蛍光のピンクのテープが貼ってあったりして、その木にたどり着いてそこから先を見渡すと次のテープが貼ってある木を見ることができます。その次の目印に向かって歩くということを繰り返すと先に進むことがでます。

この目印も参考にはなりますが、本当に目的の岩場へアプローチするためのものなのかわからないので、このテープに依存せずに自分の判断でアプローチをするようにしましょう。

また、道迷いの対策としてGPS付きの携帯電話などの装置も役に立ちます。多少の誤差はあるものの大体の位置は把握することができます。

体調不良

アプローチで危険状態に陥る原因として、体調不良も挙げられます。特に自然のアクティビティですので、気温や湿度が変わりやすく体調への影響も大きいです。そんな中で発熱や咳、吐き気、腹痛、貧血などを引き起こすことが考えられます。

これに対しては事前に体調管理をしておくことが重要です。前日夜更かしをして睡眠不足であったり、朝食を十分食べないことによって血糖値が低く集中力が低下した状態でのアプローチは危険です。

また、アプローチの前に準備運動をしないことで、段差や木の根につまずきやすくなったり、捻挫をしやすくなったりします。

岩場は都市から遠いところにあることが多いので、長時間の移動、車の運転による疲労も大敵です。同じ姿勢でずっといることで体は固まりますし、車の流れや路面の状況に集中しているので目が疲れてしまいます。

単独行動

特にボルダリングに関してですが、一人で登りに行くことも危険源として考えられます。一人で行動していて大きな怪我をすると、移動ができなくなってしまいます。さらに電波の届かない場所などでは救助を呼ぶこともできず、命に関わることになる可能性もあります。

また経験者などと一緒に行動しないことで、道に迷ってしまうこともあります。不慣れな場合や初めて行く場所は、そのエリアをよく知っている人や経験者と一緒にいくといいでしょう。

複数人で行動することで動物に遭遇する確率を減らすこともできますし、荷物を軽量化できる場合もあります。

動物や昆虫

自然の中で行うアクティビティなので、動物や昆虫への注意も必要です。登山をする人であれば熊よけの鈴をするのは一般的ですが、クライマーはあまり気を使わない傾向にあるように思います。熊や鹿、猪、猿などの動物や、蛇や蜂などの昆虫も怪我の原因になります。

山の中だけでなく意外なところでは御岳でもツキノワグマが出没したことがありますので、町に近いからと油断をせず周りの状況は常に注意が必要です。

熊鈴も有効ですし、常にしゃべって人の存在を知らせることもいいです。(独り言は恥ずかしいかもしれませんが。)

あとは匂いの出る食べ物を持ち歩かないことも対策になります。

移動中には常に周りの様子に注意して、動物や昆虫がいないか確認しましょう。蜂については一匹が飛んできたら振り払わずに、ゆっくりと後退りしながら逃げましょう。

怪我をしてしまった時の対処

どんなに対策をしても怪我や体調不良は起こることは考えられれます。さまざまなリスクに対して備えておくことはクライミング中に限った話ではありません。

危険状態に陥った場合の対処法をいくつか紹介したいと思います。

まず転んだり滑ったりしたことで切り傷、擦り傷ができた場合は安静にしましょう。

傷口から出血した場合はおさえたくなりますが、土や砂などから細菌が入り込んでくることがありますので、水で流して清潔にします。可能であれば消毒液で消毒を行い、細菌が入り込むことを防ぎます。

そうしたら絆創膏を貼ったり、傷口が大きければガーゼを当てて包帯で巻きつけて固定するなどしましょう。

段差や木の根などで捻挫や骨折してしまったり、大きく出血する怪我の場合はRICE法で対処することが基本です。

  • Rest:安静にする
  • Ice:冷却する
  • Compression:圧迫する
  • Elevation:拳上する

これらの頭文字を取ってRICE法と呼ばれます。

Restはまず安静にすることで怪我の範囲が広がることを防ぎます。また、心を落ち着かせることで正しい判断ができ、2次被害が発生しないようにすることにもつながります。

Iceはいわゆるアイシングで、怪我をした箇所を冷やします。怪我をした場所は炎症が広がっていき、怪我の範囲が広くなっていってしまうので、速やかに冷却することが重要です。

Compressionは怪我の周辺もしくは心臓に近い側を圧迫して、出血を減らすことです。

Elevationは怪我をした部分を心臓より高い位置にあげることを言います。これはCompressionと同様に血液が流れる量を減らすことによって出血を減らすとともに、怪我の範囲が広がることを防ぎます

怪我や体調不良、道迷いもそうですが、まずは無駄に動き回らずに冷静になることが重要です。体力を温存しながら正しい判断をする余裕を残しておくことにつながります。

道に迷った場合は来た道を戻るようにしましょう。また、道がわからなくなったら沢に沿って進めば下に向かうことができますし、水を確保することもできます。ただし滝などで道が途切れる場合もあるので注意しましょう。

また、山をおりようと焦ってどんどん下に向かうと迷い込んでしまうので、尾根を目指すことも一つの手段です。尾根を辿っていけばいつか頂上、もしくは視界のひらけた場所に行くとこができますので、助かる確率も上がります。

もし電波が届くようでしたら携帯電話で救助を求めましょう。救助の費用や、後々に周りから白い目で見られることを恐れるかもしませんが、そんなことより命が大切ですので迷うことなく救助のヘリを呼ぶなどしましょう。

岩場別のアプローチの危険源

小川山・瑞牆

秋のシーズンには多くのクライマーが訪れるエリアですが、山の中なので落ち葉が多く落ちています。掃除してくれる人もいないので下地がわかりづらく、捻挫や転倒の原因になります。

鹿や熊などの野生の動物も多くいますので、熊鈴を持参したり話しながら行動するなどして出会わないように対策をしましょう。

笠間

低山の左伯山にある笠間ボルダーは温暖なこともあり、がよくでます。ヒップ岩の基部にある木の根っこには蜂が巣を作っていることを見たことがあります。無闇に近づいてはいけませんし、刺された場合のことを考えてポイズンリムーバーなどの道具を携帯しましょう。

三峰

秩父にある三峰ボルダーはアプローチが急な坂になっているので、スリップしないように注意しながら上り降りをしましょう。シューズは登山靴アプローチシューズなどグリップの効くものを履いていきましょう。

このアプローチには途中で補助としてロープが張ってありますが、信用しすぎない方が良いでしょう。経年劣化している可能性もあるので、滑った時の最終手段というくらいの気持ちで、自分の足を信じて歩きましょう。

安達太良山

福島県の安達太良山は標高の高い山中にあり、駐車場から岩場までは1時間程度の登山になります。アプローチの途中で道が崩れている場所があり、もし滑落することがあれば谷に落ちる可能性があります。

また、山の至る所で硫黄が吹き出しており、時折風に乗って硫黄のにおいを感じることがあります。天然の硫黄泉が沸いており、露天風呂を楽しんでいる人を見ることもできます。

しかし高濃度の硫黄が噴き出すこともあり、実際親子が亡くなる痛ましい事故がありました。その注意喚起の看板もエリアの下部にあるので、安全には心がけて登りましょう。

城ヶ崎

クライミングエリアは海に面した岸壁になります。岩場の基部にたどりつくためには、上の遊歩道からロープを使ったクライムダウン懸垂下降などの技術が必要になります。

帰る時には逆に登らなければいけませんし、一日中登った後で疲労がたまっているなか、ロープやヌンチャクなど重量のある荷物を背負っている状態で登り返すのは体力的に厳しいものがあります。上級者向けのエリアと言っていいでしょう。

また、城ヶ崎のように海辺のエリアは波にさらわれる可能性がありますので、海には近づかない、サンダルに履き替えたりせずに常にアプローチシューズを履いておくなど対策が必要です。


以上クライミングエリアに行くまでのアプローチの危険について書いてきました。アプローチ上には様々な危険がありますし、環境的な要因から自分自身の体調や準備など内的な要因もあります。

それゆえに対策をすることを面倒に思うかもしれません。しかし怪我や遭難は自分自身も避けたいところですし、周りの関係者に負担をかけてしまうことになります。そうならないようにそれぞれに対策を十分にとって楽しくクライミングができるようにしましょう。

コメント

タイトルとURLをコピーしました